技術経営系専門職大学院協議会

MOT協議会大学合同説明会 [開催報告]

2006年9月30日開催
当日の様子

MOT協議会メンバーの10大学が、各大学の特徴を説明する「MOT大学合同説明会」が、2006年9月30日、JR田町駅前にあるキャンパスイノベーションセンターにて開催された。キャンパスイノベーションセンターは、東工大をはじめとして、地方にある大学が東京オフィスを構え、又各大学が産学連携の窓口を置いている施設です。

まず、古川勇二MOT協議会会長が、「日本型MOTの動向」のタイトルで講演された後、10大学がそれぞれの大学の特徴と育成する人材像について説明しました。

最後に、日本MOT学会会長のNEC名誉顧問の金子尚志氏による「私のMOT論」の記念講演があり、盛況のうちに幕を閉じました。古川勇二MOT協議会会長、金子尚志MOT学会会長のご講演の様子を報告します。

講演「日本型MOTの動向」

古川勇二 MOT協議会会長 東京農工大学 大学院技術経営研究科長

古川勇二 MOT協議会会長

MOT協議会の発足から今日に至る経緯、MOT協議会が取りまとめている「MOT専門職大学院のあり方」「MOT評価基準の策定活動」を紹介された後、ご自身の体験をもとに、学位研究「芯なし研削における事例振動の適応性制御」を紹介され、どうしてMOTに興味を抱いたかについて説明された。

誰もが丸い粒子は簡単にできると思っているが、これを安価に製造することは難しい。2平面間ではまず不可能であるが、これを3平面間内で回転することによって確実に真円を作れることを見出された。当時の日本では誰もがこの研究成果を評価しなかったが、欧米はこの論文に着目し、ベアリング製造技術に利用して瞬く間に社会に広がっていった。しかし研究成果の実用化は進んでも、ビジネスにすることはできなかった。古川教授は、もし、その時に技術経営の知識を持っていたならば違った展開になったであろうと振り返られ、技術経営知識の重要性を示された。

MOT教育が目指すものは、技術革新、経営革新、知価社会を実現できる技術経営トップ人材の育成である。自動車産業発展の歴史を例に、技術イノベーションの重要性を指摘された。

ここで「21世紀は、日米欧が覇権を競い合っていくが、わが国の技術イノベーション方針はいかにあるべきであろうか?」という課題を参加者に投げかけられた。
1.BRICsの脅威、2.先端技術、3.省エネ・環境調和、4.イノベーテイブな製造の4つを軸として、それぞれの地域の特質や競争力を比較する中から、「日本型技術イノベーション」や「日本型の経営の方向」が見えてくると指摘され、「技術発の経営層を輩出していくこと」が「日本型MOT」の目指す道であるとまとめられた。

基調講演「私のMOT論」

金子尚志 日本MOT学会会長 NEC株式会社 名誉顧問

金子尚志 日本MOT学会会長

金子先生は、NECに入社後、休職してフルブライト留学生としてUC Berkeleyに留学した経験、また、もう一度休職してベル研究所の研究員となった経験などにおけるご自身の歩みを振り返り、MOTとの関わりから話を始められた。

MOTの必要性に関して、1.経営知識の不足間を体験したこと、2.UC Berkeley(UCB)におけるMOTとのかかわりをあげられた。技術屋出身の経営知識の不足、経営戦略面でのMethodologies、財務戦略などの必要性を、ご自身のアメリカ現地法人の経営責任者としてのリストラ、役員解雇、工場閉鎖などの体験を基に説明された。

UCBのMOTの概要にふれながら、Management of Technologyは、技術経営と訳されるが、この解釈では本質を誤る恐れがあること、今日の事業環境では、技術革新を理解しないで企業経営は成り立たないこと、これからは、「技術革新に注視した経営学」が期待されることを力説された。

日本MOT学会の発足の経緯を説明され、学会のMISSIONは、経営者と議論して、切磋琢磨によるMOT教育の質的向上を図ることであると訴えられた。

最後に、ご自身の体験を基に、13か条の「技術者が留意すべき陥穽」(反面教師として自らの戒めとしたい事項)を紹介された。
いずれも、技術屋が心に刻んでおくべき内容で、後輩に対する厳しく且つ温かい心のこもった戒めであった。

  1. 物事に拘り過ぎ、大局を見過す傾向。
  2. 論理的な判断に強い反面、非論理的判断に弱い。
  3. 総合的判断に欠ける。バランス感覚が欠如し、専門バカ。
  4. 総合判断を要することも、自己の専門の科学的方法論で判断しがち。
  5. 一芸(技術)に秀でると、他の芸を軽視する傾向。
  6. 専門外のこと(経理財務等)は、他人に任せる傾向。
  7. 技術屋は「自己の業績に自信」は結構だが、他分野についてもとかく過剰な自信を持ちがち。慢心は、冷静な経営判断の最大の敵。
  8. 数字に強いと思っている。(が、とんでもない。技術者は数字を誘導可能と軽視して、暗記しようとしない。文系は数字を暗記し、その経営的意味を諳んじている。)
  9. 経営者は、未来の予測をベースに経営判断。予測には科学的知識が明らかにプラスする。しかし、最後は総合判断。
  10. 技術系も終着地として経営に携わることもあったが、これからはそれだけでは勤まらない。「経営のプロ」としての学習・努力が必須。
  11. 技術業績のみで経営者に抜擢するのは不適切。
  12. 技術屋は論理的な反面、意外性に弱い。意外な着地点の模索能力に弱い。
  13. 他人を納得させる説明能力に欠ける。

各大学説明

MOT協議会メンバーの各大学が、ミッション、育てたい人材像 カリキュラムの特徴 などを説明しました。その時の資料をご覧いただけます。