第1回 東京MOT6大学連合シンポジウム 動き出した技術経営・MOT大学院~東京MOT6大学連合~ [開催報告] #2

2005年9月27日、東京国際フォーラムにて東京6大学連合初のイベントとなる第一回東京MOT6大学連合シンポジウム『動き出した技術経営・MOT大学院』が開催されました。募集人員100名に対し、はるかに上回るお申込を頂戴し急遽定員を変更しての開催となりました。経済産業省、文部科学省よりご挨拶をいただいてスタートしたシンポジウムは、閉会まで満席という盛況のうちに幕を閉じました。

参加された方もメモをとりながら聞かれておられた経団連山野井さま、前東京大学助教授 参議院議員藤末先生のご講演、さらには、東京大学名誉教授平澤先生のモデレートのもと、白熱したパネルディスカッションの様子をご報告いたします。

開会挨拶

東京MOT6大学連合 組織委員長 古川勇二

東京MOT6大学連合 組織委員長 古川勇二

東京にある技術経営専門職大学院が結集しました。まず皆様には技術経営専門職大学院とは何であるか、正しく認識して頂きたいと思います。文部科学省は、技術経営コースを備えている大学から、専門職大学院を選び認可しています。法科大学院のようなプロフェッショナルな人材育成のための大学院を専門職大学院と呼びますが、一般の大学院に比べ教員の基準が厳しいものです。まず東京MOT6大学は、文部科学省の設置基準を満たす専門職大学院であることをご認識いただきたいと存じます。

技術経営系専門職大学院教育は、技術革新、経営知見、知価社会を実現できる人材を育成、輩出することを大きな目的としています。

東京MOT6大学連合は、技術経営系専門職大学院教育の教育体系を確立、普及・促進、修了者による技術社会の変革を目指します。その変革の方向のなかで、MOT協議会を発足することが決まりました。東京以外の技術経営専門職大学院がある山口大学、九州大学へも参加も呼びかけています。MOT協議会ではさらに、認証評価、教育内容の充実に取り組みたいと存じます。このシンポジウムの狙いは、技術経営専門職大学院の正確な認知、積極的な意見交換、より良い教育内容の追求です。是非最後までお付き合い頂ければと思います。

経済産業省産業技術環境局 中園技術戦略官

経済産業省産業技術環境局 中園技術戦略官

わが国の産業競争力を高めるためには、技術経営が重要であることは言うまでもありません。経済産業省としても、MOT普及のための政策を打ち出し、現在では全国で4000名の方がさまざまな機関でMOTを学ばれております。企業を10回倒産させる経験を、MOTでは1年で学べます。中でも東京MOT6大学は先駆的に取り組んで頂いております。本日のシンポジウムでは産業技術開発力強化に対する熱意をぜひ感じていただければ幸いです。我々もMOTを一過性のブームに終わらせないよう、政策展開して行きたいと思います。

文部科学省高等教育局 浅田専門教育課長

文部科学省高等教育局 浅田専門教育課長

これからの知の時代、大学、大学院には社会の知の拠点としての役割、責任があります。世界でも知の時代に適応するための大学改革が進んでいます。生活の質の向上、科学技術立国のためには人材の育成が不可欠です。大学院では何ができるのか、何をすべきなのか、産業界とどのように連携をとるのかが重要です。専門職大学院もこのような時代の要請から生まれた仕組みです。中でも東京MOT6大学はいち早く、社会の要請にこたえ先駆的に取り組まれています。MOT人材の育成を、政府の提言としても非常に重要な課題と位置づけております。技術と経営を取り入れた、高度な問題解決能力をもった人材育成が必要です。東京MOT6大学には、見本となるよう期待しております。

基調講演

要素還元思考から要素複合思考へ 〜産業界が期待するMOT〜

社団法人日本系残団体連合会 産業技術委員会 産学官連携推進部会長 (味の素株式会社顧問) 山野井昭雄 氏

社団法人日本系残団体連合会 産業技術委員会 産学官連携推進部会長山野井昭雄

求められるMOT人材とはいったいどのようなものでしょうか?私は、MOT人材は教育と産業の世界をつなぐ、大きな架け橋のような存在であってほしいと思います。MOTといったテーマを考えると、MOT人材には、教育という側面と研究開発という二つの側面が存在します。さきほども古川先生のお話にもありましたが、MOTは広い産業社会のどの部分を担うのかが問われます。MOTに対する要請は、学術的研究とはまったく異なってきます。また、単なる学術的研究とは異質であるべきと思います。実用につながる真理の探求こそがMOTに求められます。

さて、企業の現実のなかで苦闘してきた私の経験を織り交ぜながら話をさせていただきたいと思います。味の素は大学研究者と起業家の出会いによって企業され発展してきました。味の素グループは、アミノ酸系と食品系の二つの価値観の違うものを持っているところが強みであります。旧ソビエト連邦が崩壊する時にある企業に研究開発の技術力が蓄積されていることがわかりました。そのソ連の会社と提携することによって、味の素の発展の元を作ったのです。そして、その提携と子会社化が味の素世界戦略での競争優位 を維持しています。

今後の科学技術創造立国に向かって日本は何をすべきなのでしょうか?従来の専門的な学問体系やそれらにもとづく技術体系だけでは対応できません。今後は個々の専門体系を進化

させて新しい理論や体系を構築する人材がぜひとも必要です。そのためにはインターンシップ、産学間の人材交流、JABEEや先端的COEの活性化が望まれます。そして進化する専門体系を専門体系のままにしておくのではなく、複数の専門体系の組み合わせが大事です。それからを産官学の大きな枠組みのなかで連携させ、融合させてゆく。そのような大局観に立って、この日本を再び活性化させてゆく、新たな時代のMOTが待たれているのです。

わが国の産業競争力へのMOTの貢献 〜がんばれ MOT!〜

前東京大学助教授 参議院議員 藤末健三 氏

既得権に安住した大企業や既存中小企業からだけでは、時代の変革に対応したイノベーションが起こることは期待できません。イノベーションを起こし新たな産業の担い手となるベンチャー企業こそが今の日本産業界になくてはならないものです。

さて、米国と日本をフォーチュン2000のベスト1000企業を比較してみました。米国では、1900年以降は100年以上の寿命を持つ企業が80社ほど出てきました。さらに、80年代〜90年代にかけては新企業の開業数が増加しています。逆に日本では、60年代以降に減少しているというのが現状です。米国では1970年代からIT企業の設立が徐々に見られ、80年代以後も継続的に企業が生まれていますね。そして、それら新規企業が現在のアメリカ経済を牽引してきました。日本では戦後、我が国を代表する企業はほとんど誕生していないのです。1950年代半ばから1970年代前半までの高度成長期においてさえ、企業が生まれず、その後80年代、90年代にも生まれていない。我が国は戦前の遺産で生きている。残念ながら、我が国は年老いた企業によって支えられている経済が続いてきました。これでは、さらなる成長は見込めません!

我が国が長期的低迷から抜け出すため、また今後も国際経済における一定の地位を維持するためには既存の企業に頼っているだけではもはや不可能です! ではどうしたらいいのか。1. 新たな有望ベンチャー企業や新規事業が次々と生み出し、2. 新たな商品やサービスが次々に創出し、3. 新たな需要・市場を開拓し、その結果として4. 多くの雇用が創出するというシナリオです。革新的なベンチャー企業の育成に国をあげて取り組むべきです。

イノベート・アメリカを参照して議論します。イノベーションとは、社会的、経済的価値の創造へと導く、発明と洞察の融合です。すなわち、単なる発明や技術革新にとどまらず、それに洞察を加え、社会や経済に価値をもたらしてこそ、イノベーションなのです。 私には3つの提言があります。

1.日本が学ぶべき点
米国は、政策立案に現役の政治家をメンバーに入れている。我が国においても当初から政策実行のことを考え、政治家が積極的に参画すべきです。

2.国家ビジョンを決める
国家のビジョンはその国(企業)の志ともいえ、その志の大小は国の長期的な成長に大きく影響します。 今こそ時代に流されない長期的な高い目標をセットしましょう。

3.戦略作りに予算をかける
我々が読んでいるメイド・イン・アメリカなどの報告書は、膨大な報告書のほんの表面でしかありません。プロジェクトにおける予算は数億、レポート群の厚さは2メートルを超えることもあります。それに対して日本の政府は「知恵にお金をかけること」をほとんどやらずにきました。いまこそある程度のまとまった予算を使い、日本の産業競争力の基本的分析を行うべきなのです。

がんばれ!MOT!!